【背景】近年、小学生から大学生を対象とするゴールボールの教育実践研究が増加しているが、これらは個別報告にとどまり、教育段階別に実践方法や教育的成果の傾向を整理した研究はほとんどない。特に、どのような実践が行われ、どのような学びが得られているのかを俯瞰的に明らかにすることは、今後の授業設計やカリキュラム開発に有用である。そこで本研究では、日本におけるゴールボールの教育実践に関する文献をシステマティックレビューにより整理し、教育段階ごとの実践方法と教育的成果の傾向を明らかにすることを目的とした。教育的成果の評価はKirkpatrickモデルに基づき、学習者の反応・学習・行動・結果の観点から分析した。 【方法】2025年3月時点で、CiNii、IRDB、J-STAGE、Google Scholar、その他情報源から文献検索を行い、310件の文献を収集した。重複を除いた275件をスクリーニングし、ゴールボールの教育的実践を含む12件をレビュー対象とした。抽出項目は、目的、対象者、実技回数、方法、結果、Kirkpatrickレベルとした。 【結果】対象年代別では小学生対象が4件で最多、実技回数では1回の実践が5件と最も多かった。特に小学生を対象とした1回限りの授業が多く、体験的な位置づけられている傾向が示された。Kirkpatrickレベルでは、レベル1が4件、レベル2が9件であり、レベル3および4に該当する研究は確認されなかった。 【考察】ゴールボールの教育実践は、学習者の反応(怖さ・楽しさなど)の変容や学習の成果(新たな身体感覚への気づき・障害観・スポーツ観など)に焦点が当てられていた。一方、行動変容や社会的影響まで踏み込んだ実証研究は見られなかった。今後は、学びの拡張性を高める継続的な実践や多面的な教育効果の検証が課題である。