1. 緒言
浸潤性粘液性腺癌(IMA)は,豊富な粘液産生を特徴とする肺腺癌の一亜型である.IMAでは,KRAS遺伝子にドライバー変異を有する症例が多く認められ,KRAS遺伝子異常と粘液産生を含む腫瘍の形態形成との関連が示唆される.我々は,IMAで特徴的なG12V型KRAS変異に着目したRNA-seqデータ解析により,G12V型KRAS変異を有する細胞において, disialyl-T型糖鎖の生合成が促進される可能性を見出した.そこで本研究では,G12V型KRAS変異を有するRERF-LC-Ad2細胞 (RERF細胞)にKRASを標的とするmiRNAを導入し,disialyl-T型糖鎖の生合成に関与する糖鎖関連遺伝子の発現を解析することを目的とする.
2. 実験
RERF細胞を3.5cmシャーレに2.0×103 cells/dishの密度で播種し,24時間後にmiR-181dをトランスフェクションした.72時間後にこれらの細胞からcDNAを調製した後,定量的PCR(qPCR)により7種類の糖鎖関連遺伝子の発現量を解析した.
3. 結果および考察
ST6GALNAC4はRERF細胞でほとんど発現しておらず,Neu5Acα→6GalNAc構造が形成されず,この細胞ではsialyl-T型糖鎖が主に生成される可能性が示唆された.miR-181dの導入により,GALNT1,GALNT2,GALNT14,ST3GAL1,C1GALT1C1の発現が減少していたことから,miR-181dによるKRASの翻訳抑制に伴い,sialyl-T型糖鎖の生合成に関連する遺伝子群の発現が抑制され,sialyl-T型糖鎖の生合成が抑制される可能性が示唆された.