ピロロ[2,1-a]イソキノリン骨格は,様々な生物活性を示す化合物の構成要素として知られているが,光学活性体として得る手法は限られており,多様な官能基を有する光学活性ピロロ[2,1-a]イソキノリン誘導体の効率的な合成法の開発は未だ発展途上の段階である。我々はキラルフェナントロリン−Pd錯体(L1-PdCl2)を触媒とする,マレイミド誘導体の不斉共役付加反応により,高いエナンチオ選択性で3位に第四級不斉炭素を有するスクシンイミド誘導体が得られることを見出している1)。そこで,3,3−二置換スクシンイミド誘導体を鍵中間体とし,2位に第四級不斉炭素を組み込んだピロロ[2,1-a]イソキノリン誘導体合成に着手した。
窒素原子上にホモベラトリル基を有するマレイミド誘導体1の,アリールボロン酸を求核剤とするL1-PdCl2を触媒とした不斉共役付加反応により,39−96 %eeのエナンチオ選択性で3,3−二置換スクシンイミド誘導体2を得た。続いて,2についてトリフルオロメタンスルホン酸を用いたビシュラー・ナピエルスキー型反応を行ったところ,位置選択的に環化が進行することを見出した。続くNaBH4を用いた水素化では,ジアステレオ選択的に反応が進行し、生成するN−アシルイミニウムイオン中間体の2位の置換基がジアステレオ選択性に影響することが示唆された。本発表では,スクシンイミド誘導体2の3位置換基によるジアステレオ選択性発現の考察と,他の反応条件の結果も併せて報告する。