二酸化チタンナノ粒子(TiO 2 -NP)は、産業界で広く使用されているナノ粒子である。妊娠期にTiO 2 -NPの曝露を受けると、仔の中枢神経系に何らかの毒性作用を引き起こし、脳の発達を阻害することが示唆されている。しかし、その根本的なメカニズムはまだ特定されていない。本研究では、妊娠期のTiO 2 -NP曝露が、新生仔マウスの脳におけるグローバルなDNAメチル化とmRNA発現パターンに及ぼす影響を調べた 。妊娠期の TiO 2 -NP曝露が新生仔マウスの脳におけるDNAメチル化に及ぼす影響を、CpGアイランドマイクロアレイを用いて解析したところ、ゲノム全体に渡って遺伝子のDNAメチル化状態に変動が見られた。更に、GO termを用いたGSEA解析により、DNAメチル化状態に変動の見られた遺伝子が細胞増殖、発達、転写因子の制御に関連していることが示唆された。MeSH termを用いたGSEA解析では、DNAメチル化状態に変動の見られた遺伝子は、神経幹細胞の増殖と分化に関連していることが示唆された。また、ミクログリア細胞ではTiO 2 -NP曝露後に各種の炎症性サイトカインの放出が観察された。これらの結果から、我々は、妊娠期のTiO2-NP曝露が、炎症反応を引き起こし、発生段階における神経幹細胞の増殖・分化を阻害することで、成長後の学習 ・記憶障害やドーパミン作動系などの脳機能に悪影響を及ぼすと推測している。この研究結果は、ナノ粒子が胎仔組織、特に脳の炎症反応を誘導し、神経幹細胞のDNAメチル化状態を変化させることにより、神経発達に長期的な影響を及ぼす可能性を示唆している。よって、今後は神経幹細胞に焦点を当てて、脳障害などに直接かかわるDNAメチル化異常およびその根底となる分子メカニズムを研究する必要がある 。