動的界面物質科学
界面活性剤・脂質二分子膜、コアセルベートなどの自己組織化ソフトマテリアルから、金属酸化物・金属コロイド触媒、金属錯体や高分子を基盤とする多孔質体、炭素材料をベースとした有機熱電材料まで、多様な物質系を対象に研究を行っています。これらの材料では、温度、濃度、添加物、溶媒、外場などの条件変化に応じて、界面構造、集合状態、表面状態が動的に変化し、その変化が最終的な機能を大きく左右します。私の研究では、このような動的界面の変化を分子・集合体レベルで理解し、材料設計と機能発現へ結びつけることを中心課題としています。
とくに、界面活性剤系や脂質分子膜、人工細胞、コアセルベートのような自己組織化系では、界面のわずかな違いが、膜構造、相分離、物質包接、輸送特性、刺激応答性に大きく影響します。一方で、コロイド触媒、多孔質材料では、表面状態や反応場の設計が、活性、選択性、安定性、輸送特性の発現に直結します。さらに、有機熱電材料では、界面・分子配列・輸送経路の制御が電荷輸送特性や環境安定性を左右し、エネルギー変換機能の鍵となります。こうした一見異なる材料群を、界面の動的変化が機能を支配する系として共通の視点から捉えています。
この考え方は、医薬品、化粧品、化学素材、エネルギー材料、生物医学材料など幅広い分野に関わっています。たとえば、薬物や核酸の送達を担う微粒子・膜・人工細胞系では、細胞トランスフェクションに関わる界面設計が重要です。また、乳液、ゲル、分散系を扱う化粧品応用においても、使用感、安定性、機能性を左右する本質的要素として界面活性剤による界面制御が重要です。さらに、有機熱電材料の研究では、生体近傍の温度差を利用する生物医学分野での自己給電型温度センサーへの展開も進めています。
基礎的な界面化学を土台として、新しい材料機能の創出を目指すとともに、動的界面をどのように評価し、何をもって状態変化とみなすのかという判定基準の構築や、測定法・比較法の標準化にも取り組んでいます。材料を作るだけでなく、どのように正しく理解し、比較可能に評価し、機能設計へ還元するかまで含めて探究します。